有機モリブデン・MoDTCの使用上の注意! その5 現在の課題 DLC
FM剤のなかでモリブデンは比較的安価でかつ効き目が良いですが、課題もあります。鉄にはとても良く効きますが、セラミックやアルミ、チタン、DLCなどには鉄と比較して効果があまり良くない場合があります。
特に問題はDLCです。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)は炭素系硬質薄膜の一種で化学的不活性さと高硬度による耐摩耗性で低い摩擦係数となります。DLCにも種類があり「水素含有DLC膜」は表面の水素原子同士の反発力で低摩擦となり、「水素非含有DLC膜」は表面にグラファイト構造を作ることでせん断抵抗を減らし低摩擦となっています。
近年DLC膜へのMoDTCの攻撃性と低摩擦阻害が報告されています。少し専門的になりますがMoDTCはトライボケミカル反応でMoS2(二硫化モリブデン)以外にMo2C(二炭化モリブデン)も生成します。このMo2Cが問題で非常に硬いためDLC膜を摩耗させると推測されています。まだ研究途中ですが対策がもとめられています。
FM剤にはモリブデン以外にいろいろなものがあります。実はどんな素材にも効くFM剤はすでにあり「T-BLEND」では一部のオイルに使用しています。いくつかのタイプがあり抜群に効くものから、燃費を伸ばす程度の優しい効き目まであります。詳細は企業秘密ですがかなり高価なため簡単に使えないのが残念な点です。モリブデンは価格と効果がとてもバランスが取れているため世界中の多くのオイルに使用されています。万能薬です!
オイルには適切なFM剤を適量使用することがとても大切です。
「適所適材」ではなく「適所適剤」が大切です!