固体潤滑剤とは その6 最新技術「無機多層フラーレン・二硫化タングステン」 平面から立体へ ①基本原理
今回は固体潤滑剤の最新技術です。長くなるので2回に分けて解説します。今回はその基本原理です。
最新の超高性能固体潤滑剤「無機多層フラーレン・二硫化タングステン」のすごさを理解するには先にフラーレン構造から理解する必要があります。1996年のノーベル化学賞は「フラーレンの発見」に与えられました。それだけ全世界に衝撃を与えた発見でした。
二硫化モリブデンをはじめ多くの固体潤滑剤は上の図のように層状構造で層が横ずれして摩擦を低減します。つまり硬い板(モリブデン等)の上にやわらかいクリーム(硫黄)を塗りその上にまた板を重ねた状態です。板は力を受けると柔らかいクリームが横にずれて摩擦を低減します。
これに対してフラーレンは立体構造でまさにサッカーボールです。サッカーボールは五角形12個と六角形20個で出来た32面体で、フラーレンも原子が五角形の構造と六角形で球体を作ります。摩擦低減効果としては板と板の間に小さなボールがたくさんはいりこみ力を受けるとボールが転がることで摩擦を低減するイメージです。層構造とは全く異なるすごい効果です。
最新の固体潤滑剤技術は「フラーレン」よりさらに進んだ「多層フラーレン構造(たまねぎ状なのでオニオンライク構造とも言う)」となっています。大、中、小の何層ものフラーレンが重なりより強い圧力に耐えることが出来ます。さらに素材も「炭素」から、最新技術では超高性能の「タングステン」で製造可能となりました。つまり同じボールでも強さが全く違います。
これが世界の最先端技術です。費用がかかっても絶対壊れてはいけない場所で使用されています。さてこれをエンジンオイルに使ったらどうなるでしょうか。
次回はこの最先端の「無機多層フラーレン・二硫化タングステン」についてさらに詳しくお伝えします。お楽しみに!