PAOのシール適合性(攻撃性)について
今でもPAOを入れるとエンジンからオイル漏れがするのではと気にされる方がおられます。今回データを基に説明させて頂きます。
PAO・エステル・グループⅢ・鉱物油いろいろなベースオイルがありますがシールへの影響はベースオイルメーカーからはほぼ公表されていません。ただ弊社では自社で使用しているPAO及びmPAO(メタロセンパオ)は資料がありますのでこれに基づいてお話します。
よく言われるのが基本的にシールに対して
- 鉱物油は膨張も収縮もさせない
- PAOは収縮させる
- エステルは膨脹させる
と言われています。
では実際にはどの程度でしょうか。オイルシールには素材により何種類かありますが今回は「ニトリル」という種類のシールでお話します。テストはそれぞれのベースオイルにシールを1週間付けておき体積がどう変化したかを計測したものです。
弊社が使用しているPAO6+(PAO6の高級版)では-4%程度、mPAO150で-7%程度です。これに対してアジピン酸エステルで+15%程度、ポリオールエステルで+18%程度、さらにエステルの種類によっては+25%程度も膨脹させるものもあります。
見て頂くと意外とPAOのシール変化が少なくエステルの変化が多いのがわかります。ちなみに鉱物油は資料がありませんが鉱物油で製造したオイルのデータを見ると-1~-3%程度ですので実際はわずかに収縮傾向があるのではと思います。
なおAPI規格で許されているシールの収縮・膨張は『-5%~+10%』までです。過度の収縮も膨張も規格の範囲外となります。つまりPAOとエステルは組み合わせて使用した方が収縮と膨脹を打ち消しあい良いと言うことになります。
最後に弊社ではPAOを使用してオイルを製造する場合はエステルやアルキルナフタレンと組み合わせてシールへの影響が出ないようにフォーミュレーション(ブレンド)しています。ご安心してご使用下さい。
おまけ シールのことをオイル業界では「エラストマー」と言います。英語の「elastic」と「polymer」を合わせた造語で「伸縮性がある高分子」という意味です。