DLCについて その3 モリブデンによるDLCの異常摩耗と対策
DLCとオイルの関係で一番大きな問題が「モリブデンによるDLCの異常摩耗」です。SP規格オイルではチェーン摩耗対策や省燃費等のため多くのメーカーでモリブデンを使用しています。そのためこの対策は重要です。
モリブデン(MoDTC)による異常摩耗が問題となるのは上記表の下側「水素含有型CVD-DLC」です。特に「a-C:H」はプラズマ製法で原料ガスに水素が含まれるため柔らく、さらに黒鉛分(グラファイト)が多めでより柔らかいDLC膜です。つまり硬い順に「 Ta-C > Mo2C(モリブデン生成物) > a-C:H 」となりモリブデン生成物より「a-C:H」が柔らかいため異常摩耗が起きます。
異常摩耗の原因は大きく2つあります。
- アブレシブ摩耗(やすりのような摩耗) モリブデンの生成物である二炭化モリブデン(Mo2C)や三酸化モリブデン(MoO3)などが高硬度粒子としてやすりのようにDLC膜を削りとり異常摩耗が起きます
- トライボケミカル反応(化学摩耗) モリブデンが二炭化モリブデン(Mo2C)に化学反応する際、DLCの骨格である炭素(C)を奪い摩耗を促進します
(異常摩耗の原因はまだ研究途中で完全には解明されていません)
異常摩耗対策としては大きく3つあります。
- DLC自体を改良することで異常摩耗を防ぐ方法で研究が進んでいます
- MoDTC とZnDTPを組みあわせるとZnDTPが鋼鉄上に被膜を作るためモリブデン生成物が抑制され耐久性が出ると研究結果が出ています
- 無灰系摩擦低減剤(GMOなど)をオイルに添加すると異常摩耗を防ぐという研究結果が出ています
DLC自体の改良は自動車メーカーや素材メーカーに任せますが、オイル製造面からは使用するモリブデンの種類と量、ZnDTPの種類と量、無灰系添加剤の添加などで異常摩耗の対策をほどこしています。(もちろんT-BLEND OILはDLC対策済みです)
オイルマニア向けのおまけ
無灰系摩擦低減剤には多くの種類がありますが多分一番多く使用されているのがGMO(グリセロールモノオレート)と思います。GMOにもGMEやTDEA・GDOPなど多く種類が研究されています。