PPD 流動点降下剤 小さな力持ち!
PPD サンプル
先日、長年使用してきた「PPD=流動点降下剤」が製造中止となり切り替えが必要なため選定をしました。そこで今回はPPDについて書きます。
まず「流動点」ですがオイルを試験管に入れて温度を下げていき、試験管を横倒しにして5秒間動かなくなった温度を「凝固点」そこから2.5℃上の温度を「流動点」と言います。例えば凝固点が-20℃なら流動点は-17.5℃です。
ベースオイルの流動点は鉱物油で約-10℃~15℃程度、グループⅢ(VHVI)で-15℃程度です。これにPPDを0.1~0.2%加えるとなんと流動点は-40℃位まで一気に下がります。PPDは本当に小さな力持ちです。
ではなぜ流動点は下がるのでしょうか?実は原油から精製して製造するベースオイルにはパラフィンと呼ばれるろう分(蝋燭のろうのようなもの)が含まれこれが潤滑を助けていますが「ろう」ですので冷えると大きな結晶を作り固まります。PPDはこの結晶と結晶の隙間に入り結晶が大きく育つのを邪魔します。男女の仲を引き裂くのは悪い奴ですがPPDは悪の手先が手を結ぶのを邪魔する正義の味方です。
ちなみにPPDの成分は粘度指数向上剤に使用されるPMA(ポリメタクリレート)です。PPDにはバイオ燃料用など特殊なものもありますが一般的にはメーカーが変わっても性能はあまり変わりません。最近はパッケージにPPDが含まれる場合もあります。
おまけ
PAOは化学合成で製造し不純物が含まれないので流動点は-60℃程度とそのままですごい高性能です。PAOは流動点が低いため基本的にはPPD不使用ですが他の添加剤との関係で入れることもあります。