多層フラーレン構造二硫化タングステン その3 ギアオイルに入っている極圧剤がエンジンオイルに入っていない理由
結論から書くと通常の極圧剤は金属を溶かすからです!
ギアオイルに大量に入っている極圧剤がエンジンオイルには入っていません。「エンジンはギアと違いそこまで力がかからないから極圧剤は不要では?」と考える方もありますがエンジンオイルの使用油を分析するとかなり鉄分が検出されます。それはエンジンが摩耗した鉄分で本来はエンジンオイルにも摩耗を防ぐ極圧剤が必要です。
詳しく書くとエンジンやギアの潤滑には ①金属間にオイルがあり金属同士が接触していない流体潤滑 ②金属同士が軽くコツコツと触れ合う混合潤滑 ③金属同士がゴリゴリこすれる境界潤滑の3つの状態があります。③を超えるとエンジンは最後に焼け付きます。この②混合潤滑や③境界潤滑時に効果を発揮するのが極圧剤です。ちなみに歯車が直接ゴリゴリこすれあうギアオイルには大量の極圧剤が入っています。
ギアだけでなくエンジンの摩耗を防ぐにも極圧性能が大切です。しかし摩耗防止に有効な極圧剤はエンジンオイルには入っていません!!その理由は強力な極圧剤であるほど金属と激しく化合して表面から溶けて痩せていくからです!例えば硫黄系極圧剤は、1500℃まで溶けない鉄を、硫黄と化合させ二硫化鉄に変化されて650℃で簡単に溶けるようにします。このためなめらかに滑りますがどんどん鉄が硫化鉄になり溶けていきます。
これに対して多層フラーレン構造二硫化タングステンは金属や他の物質と化合せず極圧効果を発揮するのが大きな特徴です。つまりエンジンもギアも全く溶かしません。ここが優れた特徴です。さらに代表的な極圧剤の塩素系、リン系、硫黄系極圧剤には効果を発揮する温度帯がありますが多層フラーレン構造二硫化タングステンは極寒から高温まで即効で効果がでます。(下記グラフ参照)
さらに化合するタイプの極圧剤は鉄には非常に効果がありますがアルミや銅など他の金属に対しては効果がかなり落ちます。
「極めて高い極圧性能」+「化合しないので金属を傷めない」+「適用温度帯を選ばない」+「素材を選ばない」という優れた性能があるのが多層フラーレン構造二硫化タングステンです。かなりCMになりましたが次回は欠点も書いていきます!お楽しみに!
おまけ
広い意味での極圧添加剤にはエステルなども入ります。効果が弱い順に①油性剤(エステルなど)②摩耗防止剤(リン酸エスエルなど)③極圧添加剤(リン系・硫黄系)があります
おまけ2
海外の鉱山で使用されるホウルトラックと呼ばれる300トン~400トン積載できる超大型トラックのオイルにも多層フラーレン構造二硫化タングステンが使用されエンジンやギアの摩耗を防いでいます!