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有機モリブデン 使用上の注意! その9 モリブデンとZnDTP

有機モリブデン(以下モリブデン)は単体使用では効果が弱く安定しません。今回はモリブデンとZnDTPを組み合わせることでどんな効果が出るかという点について書いていきます。

下記のグラフは、モリブデンが700PPM、Znは1000PPMで往復動摩擦試験機で計測した摩擦係数です。それぞれ単体より組み合わせた方が摩擦係数が下がることがわかります。

ZnDTPは金属表面にせん断や熱に強い安定的な反応膜を作り、モリブデンの反応膜はこのZnDTPの反応膜の上にできます。ZnDTPの反応膜はせん断や熱に強い反面、摩擦低減効果はあまりありません。これに対してモリブデンの反応膜はせん断や熱に弱くて次々に壊れますが、壊れることで優れた摩擦低減効果を発揮します。例えると固い床の上にひかれたカーペットがZnDTPの反応膜で、その上にバナナの皮を並べたものがモリブデンの反応膜です。バナナの皮はよく滑べりますが強度が弱いし補充が必要です。

次にZnDTP濃度を一定にした場合モリブデン濃度を変えるとどのように摩擦係数が変化するでしょうか?下記のグラフはZnDTP濃度を1000PPMに固定してモリブデン添加量を増加した場合の摩擦係数(縦軸)の変化です。添加前の摩擦係数0.14からだんだん下がっていることがわかります。MoDTCは添加量に応じてずっと摩擦係数が下がりますが、MoDTPでは700PPMあたりから逆に上がっていくことがわかります。

 

つまりZnDTP濃度が1000PPMの場合は

  • MoDTCは添加量の増加に応じて摩擦係数が下がります。ただ現実は添加量が多すぎると溶解できず分離し、スラッジが大量に発生しLSPIも増加します
  • MoDTPは700PPMを超えると摩擦係数は上がります。ただ極圧性能は向上します。摩擦係数を優先するか極圧性能を優先するか用途に応じた使い分けが必要です

これ以外にも使用によるモリブデン量の減少対策、反応時間と反応温度、スラッジ問題、LSPI対策との関連、エステル使用オイルではエステルとの競争吸着問題など考慮が必要なことは沢山あります。長年の経験と知識が必要な部分です!!

 

おまけ

モリブデン単体では摩擦係数が時間経過とともにかなりの振れ幅で上下しますがZnDTPと組み合わせるとぴたっと安定します。この面からもZnDTPとの組合せはとても大切です。

 

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