多層フラーレン構造二硫化タングステン その5 多層と単層の違い
弊社の添加剤T-BOOSTの主原料・「多層フラーレン二硫化タングステン IF-WS2」は十数層に重なった多層が特徴です。では単層と多層でどのような性能の違いがあるでしょうか?結論から書くと多層フラーレンの方が高性能です。
フラーレンはサッカーボールに例えられますが、単層の球状です。これに対して多層フラーレンは「オニオンライク=たまねぎ状」と呼ばれ同心円状に何層にも重なっています。単層と多層は構造が似ていますが性能は全く異なります。
理由は2つあります。1つは簡単なことで単層より多層の方が強いと言うことです。より強い圧力に耐えるし、ボールが押されて縮みまた元に戻る力も強くなります。そのため多層フラーレン二硫化タングステンは最大35GPaという圧力に耐えます。
2つめは大きさです。単層フラーレンで代表的なC60フラーレンは直径が0.8nm(ナノメートル=10億分の1m)しかありません。ちなみに水(H2O)分子は3nmです。これに対して多層フラーレン二硫化タングステンは十数層が重なった多層で200nm程度の大きさがあります。この大きさが実は大切で、C60フラーレンは摩擦面の凸凹より小さいため金属間に入っても小さすぎて支えきれずゴリゴリこすれていきます。そのため意外と摩擦係数が下がりません。これに対して多層フラーレン二硫化タングステンはこの200倍程度の大きさがあるため金属間に入り込み接触を防ぎます。摩擦も下がり、かつ摩耗も防ぎます。これが多層フラーレンの優れている点です。また多層ですと大きさがあるのでボールが押されてつぶれてはもとに戻るような効果があります。
同じフラーレンでも単層と多層で性能が異なるのはこのような理由です。
文献 図は兵庫県立大学大学院 佐野紀彰助教授の論文より引用させて頂きました