次期規格SQ(仮称)GF-7の進行状況について 続報 その3 ゲル化とは!
今回は新規格GF-7で新設される「エンジンオイルのゲル化テスト」について書いていきます。日本ではあまり知られていない問題点です。
オイルのゲル化とはオイルがゼリー状になりこれがオイルポンプの入り口やフィルターをふさぎ油圧低下などのトラブルを引きおこす現象のことです。フォードモータースが長期保管した車両で油圧不良が起きることを発見し次期規格での対策を求めています。
オイルのゲル化の原因は長期保管によりエンジン内に水分が溜まった状態で始動するとオイル中のカルシウム系の清浄剤(カルシウムスルホネート等)が水分と反応を起こしゼリー状(ゲル状)になることで起こるようです。現在もフィルタビリティテストとしてASTM D6795/D6794テストがありますがこの現象を再現できないため新テストの提案がされるようです。
ただこの現象はGF-6規格を使用していない欧州車で多く起きているようで、国内ではSP GF-6規格オイルを使用することが多いためあまり大きな問題とはなっていない感じです。ちなみになぜGF-6規格オイルでゲル化が起きにくいかというとGF-6ではLSPI対策のためカルシウム清浄剤量をGF-5の1/2程度まで減らしているためです。ゲル化の問題についてはSP GF-6を使用する国産車ではあまり気にする必要はありませんが欧州車のACEAオイルで「C3 SN」や「A3/B4 SN」など旧規格オイルをまだ使用している場合は要注意です。
問題の中身がわかると新規格のリリース前に事前に対策が出来ることが多くあります。今回のゲル化もカルシウム系清浄剤の量を減らし、別の清浄剤を増やすことで対応が出来ます。少しでもいいオイルを開発製造するには新しい技術情報はとても大切です。
おまけ オイルのゲル化対策はオイル中のカルシウム系清浄剤の量を減らせばかなり解決しますが、ただ減らすだけではオイルの清浄作用が足りなくなります。そのため別の系統の清浄剤を入れる必要があります。これがわかっていないと清浄性能の悪いオイルとなります。オイルはバランスがとても大切です。
超マニア向けおまけ 新テストは現在のASTM D6795/D6794をベースにSAEテクニカルペーパー881588(マグネシウム系清浄剤の針状結晶形成)を考慮し新しいテスト方法を作りつつあるようです。