エンジン摩耗について その8 コールドスタート時の摩耗をへらす方法!
コールドスタート(冷間時始動)とはエンジンが常温まで冷えている状態で始動することで、この時エンジンは一番磨耗します。コールドスタート時のエンジン摩耗を「0」には出来ませんが減らすことは可能です。
対策その1 より高粘度オイルの使用
少し専門的になりますが潤滑とは①境界潤滑 ②混合潤滑 ③流体潤滑 の3つの段階があります。(下のおまけのストライベック曲線参照)実は金属表面は拡大するとかなり山あり谷ありで平たんではありません。
例えばピストンの山とシリンダーの山がぶつかりあうのが①境界潤滑でゴリゴリと金属同士がこすれて摩耗します。③は2つ山の間に分厚い油膜があることで山がぶつからないので摩耗しません。②はその中間で軽くコツコツこすれる状態です。
つまり油膜が厚いと摩耗しませんが、低粘度オイルは始動温度で油膜が薄いためより長い間①と②の状態が続きます。そのためオイル粘度を上げるとコールドスタート時摩耗が減少します。
対策その2 極性があるエステル等の使用
エステルやアルキルナフタレンのような極性があるものを添加すると金属表面に磁石のようにピタッと被膜をつくるので、被膜同士がなめらかにこすれることで摩耗をある程度防ぎます。極性が強いものから弱いものまであり強いものは効果も大きいですがシールを膨潤させオイル漏れを起こしたり、他の添加剤の効果を邪魔したりします。そのため適切なものを適量使用する技術が必要です。
対策その3 摩耗低減剤(FM剤)の使用
モリブデンやチタン、タングステンなどの摩擦低減剤はかなり大きな効果があります。これは金属表面に強い被膜(モリブデンなら二硫化モリブデン層)を作る、または多層フラーレン二硫化タングステンなら金属同士の間にボール状に入り込み接触を防ぐなどの効果があります。
最後に
コールドスタート対策としてはこの3つがありますが粘度を上げるのは一番簡単で確実な方法です。対策その2の極性と対策その3の摩擦低減剤は両方あわせると逆に摩耗が増えるケースがあります。これは競争吸着という現象で、金属表面は1つしかないのに、極性があるエステルと層を作ろうとするモリブデンなどが取り合いをするためです。(多層フラーレン二硫化タングステンなどフラーレンは層を作らなので競争吸着は起きません)そのためここも両立させる技術がいります。いれればいいということでないことだけ覚えておいてください。
おまけ
ストライベック曲線で左から境界潤滑、混合潤滑、流体潤滑です。左側の境界潤滑では金属同士がゴリゴリこすれあうため摩擦係数が高くなります。この図のさらに左まで行くとエンジンは焼け付きます。混合潤滑の領域の右端が一番摩擦係数が低いのは、油膜が金属があたるぎりぎりまで薄い時が一番エンジン内のオイル抵抗が少ないため燃費が伸びます。(ただ少し摩耗がすすみます)これが低粘度オイルが燃費がよい(そして摩耗も多い)理由です。